翻刻
【上段】
○南燭(なんてん)は 補 五月に
少(ちいさ)き白き花さき
実(み)のり霜後(さうご)に
紅(くれない)になるその色
美(び)なり 補 此木(このき)悪(あし)
き夢(ゆめ)を見たる時
此木(このき)をみればその
夢(ゆめ)きゆるといふ事
ゆへ多(おほ)く手水所(てうづどころ)
のむかふに植(うへ)をく
なり
○山茶(さんさ)は 補 品類(ひんるい)多(おほ)
し俗(ぞく)にさゞんくは
といふ冬(ふゆ)花 咲(さく)うす
紅(べに)白花(はくくは)なりつばき
は春さく花葉(はなは)共
に大にして色品(いろしな〴〵)有
○桜(さくら)は一名 朱桃(しゆとう)又は
麦英(ばくゑい)ともいふ 補 むかしは
梅(むめ)にかきりて花(はな)と称(しやう)
じき今は花(はな)といへは桜
にかぎる実(み)を桜桃(おふとう)と
いふ桜(さくら)は一重(ひとへ)なるもの成
しが後(のち)に八重桜(やゑさくら)の種(しゆ)
類(るい)多(おほ)くなり今は
百 種(しゆ)に及(およ)べり
○海棠(かいだう)は 補 花白く
紅色(へにいろ)の所(ところ)ありて
尤(もつとも)美(ひ)なり葉(は)はな
しのことく三月に
花さく一名 海紅(かいこう)
花(くは)といふ
【挿絵】
南燭(なんしよく) なんてん
山茶(さんさ) つばき
桜(ゑい) さくら
海棠(かいだう)