翻刻
訪ひしにさはなく皆いふ此地はむかしより地震は已前
にしりぬ去る地震も三日以前にその徴(シルシ)を知りて皆穴
に入らず用意せし故一人も怪我なしとなり其徴は
いかにして知るやと問しに将に地震せんとする前は穴の中
地気上升して傍(カタハラ)なる人もたがひに腰より上は唯濛々と
して見へず是を地震の徴とすといへり按るに常に地
中に入ものは地気をよくしる鳥は空中にありてよく上
升の気をしる今度地震せんとする時数千の鷺一度
に飛を見る又或人六月廿七日の朝いまだ日も出ぬ先に
虹丑寅の間にたつを見る虹は日にむかひてたつは常なり
いづれも常にあらざるは徴とやいはん
○又はじめにいへる地震の和名なゐふる季鷹大人なは
魚なりといふ説によりて古図を得て茲に出す是図こ
よみの初に出して次に建久九年《割書:つちのえ|むま》の暦凡《割書:三百五|十五ケ日》と
あり余はこれを略す伊豆の国那珂郡松崎村の寺
院ふるき唐紙の中より出る摺まきの暦なりとぞ