翻刻
器用(きよう)な者(もの)の顔(かほ)をして。人(ひと)にも笑(はら)はれ。我(われ)も
苦(くる)しむ。是(これ)皆(みな)生(うま)れ付(つき)の。天命(てんめい)に違(たが)ひ。己(をのれ)が
私智(しち)をもつて。拵(こしら)へしゆへなり。汝(なんぢ)も生(うま)れ付(つき)
の天命(てんめい)に順(したが)ひて。凹(ひくき)鼻(はな)は凹(ひくひ)なり。不美目(ふきりやう)なは
不美目(ふきりやう)なりに。品(しな)形(かたち)こそ。生(うま)れつきたらめ。
心(こゝろ)はなどか。賢(かしこ)きに。うつさば。うつさざらん。
只(たゞ)〳〵こゝろをみがくべし
植(うへ)て見(み)よ花(はな)のそだゝぬ里(さと)もなし
こゝろからこそ身(み)はいやしけれ
○娘(むすめ)。顔(かほ)を赤(あか)めていわく。段々(だん〳〵)の御異見(ごいけん)にて。
鼻(はな)を高(たか)ふする望(のそみ)は。やみましたれど。何(なに)をいふ
ても。此様(このやふ)な。滑稽首(ちやりがしら)では。一生(いつしやう)の身(み)の治(おさま)りも。
おぼつかなふぞんじます。何卒(なにとぞ)わたしが
かたづきしろの。しき銀(がね)を。鼻(はな)の替(かは)りに少々(しやう〳〵)
ばかり。沢山(たくさん)にどつさりと。打出(うちだ)して下(くだ)さり
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