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コレクション: STAGE5

安政見聞録 下 - 翻刻

安政見聞録 下 - ページ 15

ページ: 15

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揺(ゆり)も厳(きび)しからず。さりけれど地震考(ぢしんかう)にも。いへることく人〻(ひと〴〵)懼(おそ)れて。大路(おほぢ)に 臥(ふ)すもの少(すく)なからず。因(よつ)て日本橋へ何人(なにびと)か。はや大震(たいしん)の来る理(り)なければ。 安堵(あんど)して家に入れ。然(さ)なくは後〻(のち〳〵)夜気(やき)に犯(おか)され。病(やまひ)に罹(かゝ)らんといふことを 書(しよ)し。国字(ひらがな)を附(つけ)て童蒙(どうもう)にも。見安(みやす)きやうに是(これ)を諭(さと)せり。余(よ)も往(ゆき)かゝり に是(これ)を見て。其人(そのひと)の至誠(しせい)を感(かん)ず。さて文政(ふんせい)の度(ど)京都(きやうと)の地震(ぢしん)に。かの四方都(よもいち) といふ盲法師(めくらほふし)。朝おきて物(もの)の音(ね)を聞(きゝ)。大(おほい)に訝(いぶか)りて僕(ぼく)を呼(よ)び。今日(けふ)は大(おほい)に 調子(てうし)狂(くる)ひて。かならず災(わざは)ひのあらん日なり早く朝飯(あさはん)をしたゝめて。嵯峨(さが) の方へ伴(とも)なひゆけといふ。僕(ぼく)も予(かね)て主人(しゆじん)が明察(めいさつ)。意得(こゝろえ)たることなれば。急(いそ)ぎ 主人(しゆじん)に朝飯(あさはん)を進(すゝ)め。その身も倶(とも)に食(くら)ひしまひて。頓(やが)て手を携(たづさ)え道 を急(いそ)ぎて。嵯峨(さが)の辺(へん)へ至(いた)りしに。四方都(よもいち)猶(なほ)も安堵(あんど)せず。いまだ此処(こゝ)に ても調子(てうし)くるへり。さらば高(たか)きに登(のぼ)るにしかず。愛宕(あたご)の僧(そう)何某(なにうじ)は。年(とし) 来(ごろ)の知己(ちき)なること。你(なんぢ)も知(し)る所(ところ)なり。乞々(いで〳〵)彼処(かしこ)へ伴(とも)なへといふ。僕(ぼく)意(こゝろ)を得て 愛宕(あたご)に至(いた)り。かの僧(そう)の許(もと)にゆくに。僧(そう)は見て訝(いぶか)りつゝ。何事(なにごと)ありて早天(さうてん)に。 来(きた)られしやと問(とひ)ければ。四方都(よもいち)答(こた)へてさればとよ。今日(けふ)は調子(てうし)宜(よろ)しから ず。思ふに京中(きやうぢう)滅却(めつきやく)せんとす。然(しか)れども験(しるし)なきを。人にいふべき事(わざ)なら ねば。まづ我(われ)のみ家(いへ)を出(いで)て。嵯峨(さが)の方(かた)に至(いた)れども。猶(なほ)調子(てうし)の澄(すま)ざるゆゑ この所(ところ)まで来(きた)りし。と大息(おほいき)吻(つき)ていひければ。僧(そう)も兼(かね)てこの瞽者(こしや)が。術(じゆつ)を 知ればうち駭(おどろ)き。まづ足下(そくか)が心(こゝろ)にては。何(なに)の変(へん)と察(さつ)したる。裹(つゝ)まず告(つげ)よ といひけるに。四方都(よもいち)聞(きい)て我(われ)もまた。凡夫(ぼんぶ)なれば知りがたし。十(とを)に七八は火(くわ) 災(さい)ならん。と霎時(しばし)ありてまた考(かんが)へ。いまだ此処(こゝ)にても調子(てうし)くるひて。全(まつた)く安(あん) 堵(ど)なし難(がた)し。今(いま)少(すこ)し高(たか)き所(ところ)へ参(まゐ)りたしと乞(こひ)ければ。僧(そう)は聞(きい)て是(これ)より も。高(たか)きといふは護摩堂(ごまだう)なり。彼処(かしこ)へゆきて見よといふ。四方都(よもいち)悦(よろこ)びまた