翻刻
およひ飲食(いんし)を以て補養(ほやう)すべしといへり
これ肝要(かんやう)の語なり滅体無性(めつたむしよう)に湯に入る
ばかりにてその外の飲食身持(いんしみもち)に養生(やうしよう)
おろそかなれは却(かへつ)て大害(たいかい)を招(まね)く備前(びぜん)
の河合章尭(かわいあきたか)といふ人の有馬(ありま)の記(き)にお
よそ湯治(とうし)の人|温泉(おんせん)をおろそかに
おもふゆへに養生(やうしやう)の節(せつ)【左ルビ:ほど】を失(うしな)ふ四民共(しみんとも)
におしむべき時日(じじつ)をついやすのみなら
す仕官(しくわん)たる身はいとまなき君辺(くんへん)のつとめ
をかきてこの地に来りながら養生(やうしよう)をお
ろそかにするはあさましき事なり
唯温泉(たゝおんせん)を君(きみ)のことく神(かみ)のことくおもい
て病をのそく術(てだて)を思ふへしとかける
はさることそかし
一 およそ温泉(おんせん)に浴(よく)して病を療(りよう)すること
ちはやふる神世(かみよ)のいにしへより初りし