翻刻
ことにして固(もと)より野語無稽(やごむけい)のうかとし
たることにはあらず在昔天孫(むかしてんそん)いまた降臨(こうりん)
し玉はさる時|大巳貴尊宿奈彦那命(をゝあなむちのみことすくなひこなのみこと)と
おなしくこの豊葦原中津国(としあしはらなかつくに)を領(りよう)せさ
せおはしましこの民(たみ)の夭折(ようせつ)【左ルビ、わうじに】をあわれ
み玉ひて医薬(いやく)禁厭(きんゑん)【左ルビ、まじない】温泉(おんせん)の法(ほう)をたて
玉ひてその疾苦(しつく)をすくひ玉ふ時に
大巳貴尊御心地(おゝあなむちのみことおんこゝち)|例(れい)ならざることあり
しに宿奈彦那命(すくなひこなのこと)すなはちこれを温泉(おんせん)
に浴(よく)せしめ玉ひしかは尊(みこと)のやまひ即(そく)
時(じ)に御平愈(ごへいゆ)あり是(これ)より二神海内(にしんかいたい)を巡(じゅん)【左ルビ、め】
行(こう)【左ルビ、くり】し土地(とち)のよろしきを見て所〳〵(しよ〳〵)の温(おん)
泉(せん)を取建(とりたて)玉ひしこと旧史(きうし)に彰然(しようぜん)たり
それよりして後
舒明孝徳(じよめいこうとく)の二帝(じてい)も温泉(おんせん)に浴(よし)し玉ひて
御脳(このう)を療治(りようじ)させ玉ひし事|旧記(きうき)に見へ