翻刻
湯治(とうし)しなすへき病症(ひようしやう)にもなさすして
或(あるい)は疾苦(しつく)をのぞく事あたはず或(あるひ)は
大害(たいかい)を招(まね)くにいたる仁者(じんしや)これを見ば
豈(あに)惻然(そくぜん)たることあらさらんや
一およそ諸国(しよこく)の温泉(おんせん)を此湯はあし
き湯此湯はよろしき湯といふことをし
るも又|温泉(おんせん)といふものはいかなる理屈(りくつ)
のものゆへにこれ〳〵の病症(ひようしよう)によろし
き理屈(りくつ)といふことを知るもまづ第一(たいいち)に
温泉(おんせん)はいかにしてわき出るといふ根本(こんほん)の
理(り)をさとり得さればかなわすおよそ温(おん)
泉(せん)の湧(わき)出るゆへを唐(もろこ)しの書(しよ)にもいろ〳〵
と理屈(りくつ)をつけていへりしかしまづは
地中(ちちう)に硫黄(いおう)ありてその硫黄(いおう)の勢(せい)にて
水をしてあたゝかならしむるといへり
しかれ共この説決定(せつけつでう)ともきわめかたき