翻刻
ば温泉湧出(おんせんわきいつ)るといふ説(せつ)あれともこれも寒(かん)
国(こく)にも温泉(おんせん)あれはこの説(せつ)もとより信(しん)し
かたしといへりそれゆへ唐子西(とうしせい)の了簡(りようけん)
には温泉(おんせん)といふものは天地(てんち)の間(あいた)にひ
とつの種類(しゆるい)にて何(なに)ゆへに温泉(おんせん)の湧(わく)とい
ふことはきわめかたし天地(てんち)の間(あいた)にて
水は水|潮(うしほ)は潮|温泉(おんせん)は温泉なりかならす
しも待(ま)つことあつてしかふして後あた
ゝかなるにあらすといへり古今温泉(ここんおんせん)の理(り)
を論(ろん)ぜし諸説(しよせつ)まづは以上(いしやう)の諸説(しよせつ)ぎり
なり今|予(よ)か愚見(くけん)を以てこれを決断(けつだん)
すれは以上の諸説(しよせつ)皆(みな)非(ひ)なり取にたら
す硫黄(いおう)の勢(せい)にて温泉(おんせん)わくといふことは
古人(こじん)も多(おゝ)くこれを唱(とな)へ又今日温泉に多
くは硫黄(いおう)の臭気(しうき)あるゆへに今時の医(い)
者(しや)うかとこれをうけがひてその説(せつ)を