翻刻
湯のくたり来るすち〳〵に相違ある故な
り肥前温泉山(ひせんおんせんさん)の上に湯壺(ゆつほ)いくらもあり
その湯壺(ゆつほ)の相去ること纔(わづ)か四五間或は
八九間のあいたなり纔(わづ)か見へ渡(わた)る程の
所のことゆえにその湯に差別(しやべつ)あるまし
きことなるにその湯の色|米泔汁(こめのとぎしる)を見
るかことく白き湯あり又青黒色なる
あり砥汁(としる)のごときありその湯皆|極熱(ごくねつ)
にて人の浴(よく)すへき湯にあらす土人(としん)【左ルビ:ところのひと】これを
名つけて地獄(ぢごく)といふ浴(よく)せぬゆへにその性(せい)
効(こう)はしれねとも色さへかくのことく大相
違あるなれはその性(しやう)の相違(そうい)は決定(けつでう)なり
是|湯壺(ゆつほ)の所の土気に相違もなく沸(ふつ)す
地中の火に相違もなき筈なれともその
湯壺〳〵の水筋の相違或は土中にて
湯となりて後その湯のくゝり来る筋