翻刻
ふれそゝきて出来る湯のあつからずぬ
るからず身にふれて温柔和煦既(おんじうくわくすで)に浴(よく)し
て後|腹蔵肌膚表裏内外煦ゝ温暖(はくぞうきふひようりないくわいくゝおんたん)
の気やゝしはしやまさる湯を極上〳〵
の良湯(りようとう)とおもふへきなり筑前(ちくせん)の貝原(かいはら)
篤信(とくしん)も熱湯(ねつとう)には浴(よく)すべからず温(おん)なる
をよしとすといへり此ことはよしと
すべし
一 筑前(ちくせん)の国|三笠(みかさ)の郡天拝山(ぐんてんはいざん)の麓(ふもと)に温泉(おんせん)あり
村の名を武蔵(むさし)といふその温泉まことに右の
注文(ちうもん)のことく異気(いき)に触(ふれ)ず異臭異味(いしういみ)を
帯(おび)ず自然天然(しぜんてんねん)うぶのまゝなる湯(ゆ)のたゞ
硫黄(いわう)の臭気(しうき)を帯(おび)てあつからずぬるから
ず身にふれて温柔和煦既(おんしうくわくすで)に浴(よく)して後腹(ふく)
蔵肌膚表裏内外煦々温暖(ぞうきふひやうりないくわいくゝおんたん)の気やゝしは
しやます頻(しきり)に浴(よく)すれ共肌膚枯燥(きふこそふ)せず