翻刻
【右】
のものが飲(の)みて何等(なにら)の障(さわ)りもなく健康(けんこう)に年月(としつき)を送(おく)
りしが或年(あるとし)【左線】虎列刺(コレラ)病(びやう)の流行(りうかう)せる時(とき)ありて其水を飲(の)
める者は多(おほ)く其/病(やまひ)に罹(かゝ)れり然(しか)るに又「ペルリン」と稱(とな)
へる處に水道(すいどう)ありて其水を飲(の)める近隣(きんべん)の人民(ひと〴〵)と其の
【左線】有機物(いうきぶつ)を含(ふく)める井水を飲(の)む者とに就(つい)て【左線】虎列刺病(コレラびやう)の
感染(うつ)りたる患者(びやうにん)を比較(くらぶ)るに果(はた)して其/井(せい)水を飲(の)みし
人民(ひと〴〵)に於て其/員数(いとかづ)多かりしとぞ我/邦(くに)
日本に於ても東京(とうけい)は水道の水を飲(の)大坂は河(かは)水と
井水を飲(の)む偖(さて)前年(ぜんねん)【左線】虎列刺(コレラ)流行(りうこう)せる時大坂の人民(ひと〴〵)と
東京の人民と其病に罹(かゝ)りし患者(びやうにん)を較(くら)ぶれば仍(やはり)河井(かせい)
【左】
の水を飲める坂府の人民を以て其/算(さん)を増(ま)す其/所以(ゆへん)
は該(がい)人民の常に飲用となせる河水は其/上流(かはかみ)に於て
糞(ふん)尿(いばり)及/食物(しよくもつ)の腐(くさ)れたる異物等(ゐぶつとう)を流(なが)せるゆへ【左線】有機物(いうきぶつ)
を多量(たりやう)含(ふくみ)しこと瞭然(れうぜん、あきらか)たり又井水を常用(じやうやう)とせる者ある
も人戸(じんこ)稠密(ちようみつ)たる地なる故其井所多くは厠(かわや)、溝(みぞ)の近傍(そば)
にあり因(よつ)て前(まへ)に説明(ときあか)したる如く【左線】有機物(いうきぶつ)を多量(たりやう)含(ふく)め
り曾(かつ)て予(よ)が坂府西区に寓居(ぐうきよ)せる時其/近傍(きんぺん)に井を穿(ほ)
る者ありて凡数十尺にして土中(どちう)より蘆(あし)の枯(か)れたる
もの或は木の朽(くさ)れたる者を見る是に依て之を考(かんがふ)る
に該(がい)地方(ちほう)の地/層(そ)は獨乙國(ドイツコク)の地/質(しつ)と同じき者にして