翻刻
【右丁】
たるほどをを見て漬(つけ)るなり桶(おけ)は四斗(しと)樽(だる)の酒(さけ)の明立(あけたて)は
殊更(ことさら)よし又/古(ふる)き四斗樽をつかはゞ米などを入れて
底(そこ)の間にはさまりゐるは甚(はなはだ)あしく米粒(こめつぶ)あれば酸味を
生(しやう)ずる物なり心付(こゝろつく)べき事なり小糠(こぬか)もよくふるひ
小米のまじらぬやうにすべし《割書:因(ちなみ)にいふ古き樽はしめしたりとも|塩水はもるものなり用心あるべし》
一樽の分量(ぶんりやう)は糠(ぬか)塩(しほ)合(あわ)せて一斗大根の大小によつて差
別(べつ)あり凡(およそ)大根五六十本又は七八十本/或(あるひ)は百本小糠七升
塩三升塩糠共によくもみ合せ桶の底の方へは大根の
ふときをまわし一段(いちだん)〳〵に糠をふりて漬るなり随分
【左丁】
圧(おし)の強(つよ)きをよしとす水の一杯(いつぱい)にあがるを度とする
なり夫(それ)より押石(おしいし)を少(すこ)しゆるめ塩水(しほみづ)のこぼれぬやう
にしてたくわふ《割書:是は冬より漬(つけ)てあくる春(はる)正月口をあけるのなり|かくするは二三月頃までにつかひきる仕法(しはふ)なり又》
《割書:麴(かうじ)一/枚(まい)を入るもあれどそれにもおよばぬことなり押石/上方(かみがた)にては丸石(まるいし)は|用ひずつけものゝおしにつかふ石は石屋にてこしらへて売(うる)なり【押石の図】大小共かくの》
《割書:ごとく手かけをつけおきいくつかさねつむ|ともあぶなげなしいたつてべんりよし》又四五月/後(ご)夏(なつ)の土用(どよう)越(ごし)
には糠(ぬか)六升塩四升五升五升と等分(とうぶん)にするもあり
糠を減(げん)じ塩がちにすればいつまでも味(あぢ)のかわることなし
同三年/沢庵(たくあん)《割書:又五七年漬|》
年(とし)久(ひさ)しくたくわへ置(おく)には糠(ぬか)は右の分量(ふんりやう)に准(じゆん)じて三年