翻刻
【右丁】
こぼれて台(うてな)ばかりになる物(もの)なればすこし前(まへ)かたに取(とる)
べし扨(さて)しその穂(ほ)をはさみて後(のち)塩水(しほみづ)を拵(こしら)へとくと洗(あら)ふ
べしちいさき実(み)の中(うち)に至(いたつ)てこまかき虫(むし)ありて心(こゝろ)わるき
物なり塩水(しほみづ)にて洗(あら)へば彼虫(かのむし)去(さり)て清(きよ)し其上(そのうへ)にてたゞの
水(みづ)にて洗(あら)ひよく水(みづ)をきりてより漬込(つけこむ)べし《割書:ちりめんしそは|匂(にほ)ひよけれ共》
《割書:実べた〳〵としてかたちよろしからず|青(あを)しその実はそのまゝなれども匂ひなし》
梅花漬(ばいくわづけ)
梅干(うめぼし)の実(たね)をさり肉(にく)ばかりすきとりすきとりて擂鉢(すりばち)にてとくと
擂(すり)て平(ひら)たき器(うつわ)にのべ梅花(ばいくわ)の台(うてな)をみじかく切(きり)て梅肉(ばいにく)に
【左丁】
指(さし)ならべ蓋(ふた)をして目張(めはり)してたくわふべしいつまでも
薫(かほり)うせる事なし
桜漬(さくらづけ)
さくら中開(ちうかい)の枝(ゑだ)を切(きり)花(はな)ばかりつみて塩(しほ)三升に水(みづ)三升を
入れて煎(せん)じ一夜(いちや)さまして花とひた〳〵に漬(つけ)て軽(かる)く押(おし)を
かける近来(ちかごろ)は所々より出(いづ)れど隅田川(すみだがわ)の桜(さくら)を名物(めいぶつ)とす
菊漬(きくづけ)
黄菊(きぎく)の花ばかり摘取(つみとり)て是(これ)も煮(に)ざまし塩(しほ)にて漬(つけ)
押(おし)てたくわふ塩出(しほだし)して菊味(きくみ)にするに生(なま)の菊(きく)にかわる