翻刻
【右丁】
なり中将殿は身のをきところなくうれし
くていかなる人のとりにきたりたりともいかて
かやるへきとおもひてほとけの御かたへうちむ
きて
たのもしやかれたる木にもはなさくと
とけるちかひはいまそしらるゝ
となかめ給ひていさゝせ給へ人もしらぬ所へか
くし参らせんとてひめきみしゝうくるまにのせ
参らせてわか身はさいもんのきたはしをおく
りくるまやとりよりのりぐしきよみつのさかを
くたりにそやられけるにふもとのすゝきのむし
【左丁】
あきをしたふこゑさむ〳〵しものこすゑちくさの
いろしもになれたる野はきのおとふけゆくまゝ
にきりこめて物あはれなるに中将殿くるまの
したすたれよりかりきぬのそてあまりてつゆ
にしほたかにかくそゑいし給ひける
人しれすおもひかなへてゆくみちに
なにあさきりのそてぬらすらん
かやうにうちゑひしくるまの物みをあけられ
たりけれは月かけさし入てくものたえまの
かりかねのはかけもくもりなくわたりあらしに
かづちるこのはのをとかものかはらのともちとり