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コレクション: 養蚕の書

蚕養由来 - 翻刻

蚕養由来 - ページ 10

ページ: 10

翻刻

まらす夫婦 歎(なけ)きのあまりに清(きよ)き唐櫃(からひつ)をこしらえ かのむなしき姫宮を入申かたはらにをひて囲繞(いにやう)かつかう し奉るふうふかある夜の夢に我に食をあたへよさら はみつからが国にて所々へなかされし苦(く)を爰(ここ)にてまなふへ し後にはなんじか為には恩を報(ほう)する事なるへしと御 夢想(むそう)を蒙(かうむ)り夜も明ぬれは急かしこへ行かの入物をひ らきみれは有し姫宮の御かたちは水と消てほねしゝむら【肉叢、肉体】も なくもとよりけからはしくにほひもなく小虫となりて 有けり太夫見奉てさては又生出給ひたるそとてよろ こひける事かきりなしされは食物(しよくもつ)をまいらせんもご くのたくひこれくはれす小むしの事なれは何を以て かの虫をやしなふへき子細をしらす太夫つく〳〵と あんしけれは此姫君は異(い)国の人にてましませはこさいを しらす乍去(さりなから)姫君の御国にも桑(くわ)の木のあれはこそかの舟を も作(つく)りつらん一には国の木なれは其ゆかりとくらはれもやせん とてくはのはをとつてかのむし共の中へ入れければ此虫共 悦ひ桑の葉にとり付て食(くらう)也されは此木のはを参らせ よふる里の木にてあれは恋しくおほしめさるそや とて桑を参らせけれは次第に成長し給ふことにき とく有此むしたち桑をも参らすうごきはたらき もせずして皆々かしらを一様々あけてはな〳〵 としたる体也太夫も女房もこれは何とてかやうに有 やらんと云にその夜の夢につけていはくあひかまひ てさはく事なかれわか国にて獅(し)子吼(く)山といふ山になか