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コレクション: 養蚕の書

蚕養由来 - 翻刻

蚕養由来 - ページ 9

ページ: 9

翻刻

斧をすてかしこにたをれふしてやうやく有て此男の いはくいかなる人そ汝(なんじ)たゝ人にあらす名を名乗給へもし 名乗給はすは御命をうしなひまいらせんと申せは姫 君答ての給はく我は化生の者にてもなし人間也旧中 国と云国王のむすめ也けい母のざん言によりうつほ舟に 作りこめられ此蒼 波(は)へうかめられわれ国を出しとき 父の大王の仰に仏法 流布(るふ)の国へゆけよと仰られし也 此国は仏法繫昌の国ならはとりあけて得させよわか 涯分報答(かいふんほうとう)をせんぞ又無法の国ならは急ころせと仰 られければさては人間の仁におはすやとて急まもり奉てわか 宿所(しゆくしよ)に帰りいつきかしつき奉る事かきりなし此権太夫 はもとより子もなきものなれはかさしの花たなこゝろの 玉のことくせし也此姫君に違例の心地おはしけり此とし 月海(うみ)の上にうきしつみしたまひ御身をいたましめ給ふ 身にて有けん風の心地いよ〳〵おもらせ給ふほとに太夫 夫婦は前後につきそひ奉りいかゝはせんと歎きけりかく てひめみやの仰には我国にありし時けい母のわさにて山々 嶋々へなかしうしなはれつるにふしきの命たす かりて是まてきたつて死(しす)事も前世のさたまれる事成 へし我若年の時しんくせし故に此やまひうけつるなり みつからはかなくなりなはよく〳〵後の世をたのむなり あらなごりをしの太夫夫婦あら恋しの父大王やと これをさいごのことはにて北亡(ほくほう)の露(つゆ)ときえ給ふあるし 夫婦は夢にたからを得たる心地にて進退さらにきは