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コレクション: 養蚕の書

蚕養由来 - 翻刻

蚕養由来 - ページ 5

ページ: 5

翻刻

かゝるなさけなき事やあらんと諸人申あひけりされは姫(ひめ)宮はかの 山にひとりおはしましてなみたと共に月日を送り給ふその山に 多(おふく)の獅子ありといへとも姫宮をあやまり申事もなくかへつて はいらいし【拝礼し】奉り衣(い)食物をもとめてまいらせけりかゝるほとに星(せひ) 霜(そう)を送らせ給ふある時かの山の獅子の来て姫宮のまへにひさま つきかしらをうなたれて礼し奉て其後をのがせなかを向て かしこまる姫宮いかなる所へものせてゆくへきとてかくはするらめいつ ちへゆけはとておしかる命にてもあらはこそと思給ひて獅子に打 のり給へはよそへはゆかすして天子渡らせ給ふ紫震(しゝんてん)殿の大 床(ゆか)に おろし奉てさりぬ公卿(くけう)大臣姫君を見奉りよろこひのゝめく 事かきりなし本のことくかしつき奉れは又ある時かの后の御 わざにて姫君をいよ〳〵にくみ給ひて此度は大内よりはるかに程(ほと) 遠き山有それも国のかたはら也 鷹群山(やうくんさん)と云山也 獄(ごく)人に仰てなかさる 高くけはしき山也春夏秋しらす雪ふる山也わしくまたかの多 き山也されはやうくんさんとは云也其山にも月日を送り木の根を まくらに苔をしとねとし露霜雪(つゆしもゆき)をふすまとしてあかし くらし給ふ是も鷹(たか)とも参て番(はん)を仕り食事をあたへ奉るかゝる 所に御かとより鷹をうたせに此山へ多のつはものをつかはさるかれら 山へわけ入 数(かつ)の谷 峯(みね)をのほる然にある木の本にいたれはようかん ひれいにやさしき姫宮渡らせ給ふをよく〳〵見奉れはわか主君 の姫宮也いそきかしこまつて申す何としてかくおそろしき 所へ御 幸(ゆき)ならせ給そと申奉れは我は深き意味有て此山 ゑきたるゝ也との給へは皆々御いたはしく思ひ鷹をはとらて 此姫宮をもり奉りて都へかへり帝(みかと)にかくとそうもん申