翻刻
以上の名あり弘法|行状記(ぎょうじょうき)に伊豆國|桂谷(かつらだに)といふ山寺に佛法(ぶつぽう)修(しゅ)
行(ぎょう)し給ひけるに此寺|固(もと)より魔縁(まえん)|多(おほ)き所にて何事にも障(しょう)
碍(げ)あるがゆへ虚空(こかう)へ魔事品(まじほん)を書(かき)給ひけれバ天魔(てんま)|境(さかい)を去(さ)り
て佛法(ぶつぽう)弘(ひろ)まりしゆへ自(ミづ)から大日(だいにち)の像(ぞう)を造(つくり)て是に安置(あんち)し
給ふとぞ徃年(おうねん)|正覚院(しょうかくゐん)大破(たいは)となりしを弘治(かうじ)|年間(ねんかん)|山喜(やまき)といふ
夫人(ふじん)|堀越(ほりこし)六郎の追福(ついふく)に寺領(じりょう)を附て再興(さいかう)をせられて由(よし)|修(しゅ)
禅寺(ぜんじ)の古記に見(ミ)へたれども今ハ又|僅(わづか)の茅(ぼう)堂なり○|沉香(ぢんかう)
谷(だに)■■|土人(どじん)の説(せつ)に大師此地の形勢(ぎょうせい)を見(ミ)給ふに四十八谷の
中(うち)|一谷(ひとたに)|女谷(めたに)なれバ本願(ほんぐわん)に協(かな)ハじと終(つい)にハ本願(ほんぐわん)の地(ち)を高野(かうや)
山に定めらる然(しか)るがゆへ當寺を去(さり)給ふ時(とき)|御名残(おんなごり)に杖(つえ)を谷へ
擲(なげ)給ひけれバ不思儀(ふしぎ)と枕香林(ぢんかうりん)になりしと云又|唐山(とうざん)の僧(そう)
寧(ねい)|一山(いつさん)|當所(たうしよ)に住居(じうきょ)せし時(とき)植(うへ)たる枕香(ぢんかう)なりとも云○|達磨山(だるまさん)
《割書:また達磨岳|ともいふ》南ハ天城山(あまぎさん)に属(そく)し西ハ猿啼山(さるなきやま)に連(つらな)る頗(すこぶ)る大山
にて此山の腹(はら)に大芝(おおしば)山|以下(いか)の山々あり此山|桂川(かつらがハ)の源(みなもと)にて
四季(しき)の眺望(ながめ)|甚(はなハ)だよし○瀧尻堂(たきじりどう)紙谷(かミや)瀑布(たき)《割書:凡高さ|三丈》○山
王(わう)社《割書:大師|の作》○放光庵(ほうくわうあん)■■|古老(ころう)の説(せつ)に甲刕(かうしう)の僧(そう)永助此
処にて爪を焚(たき)しに夜々(や〱)光を放(はな)つによつて墓(はか)の上に堂(どう)を
たて永助の像(ぞう)を置(おく)○信功菴(しんこうあん)《割書:今庚申|堂と云》|蒲殿(かバどの)の戦死(せんし)を
遂(とげ)給ひしハ此小院なりと云○|白糸水簾(しらいとすいれん)又|玉垂(たまたれ)の瀧(たき)
又|槻本(つきもと)の瀧(たき)又|廣機(ひろはた)の瀧(たき)《割書:修ゼン寺門前ニ橋のあたり桂|川の水盤石にせ?ま?れん其名に》