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【右ページ】
泥田坊(どろたばう)
むかし北国(ほくこく)に
翁(おきな)あり子孫(しそん)のために
いさゝかの田地(でんぢ)をかひ置(おき)て寒暑(かんしよ)
風雨(ふうう)をさけず時々(とき〳〵)の耕作(こうさく)おこたらざり
しにこの翁(おきな)死(し)してよりその子 酒(さけ)にふけりて
農業(のうぎやう)を事(こと)とせずはてにはこの田地(でんぢ)を他人(たにん)にうりあたへければ
夜(よ)な〳〵目(め)の一つあるくろきものいでゝ田(た)かへせ〳〵とのゝしりけりこれを
泥田坊(どろたばう)といふとぞ
【左ページ】
古庫裏婆(こくりばゞ)
僧(そう)の妻(つま)を梵嫂(ぼんさう)といへるよし
輟耕録(てつこうろく)に見えたりある山寺(やまてら)
に
七代 以前(いぜん)の住(ぢう)持(ぢ)の愛(あい)せし
梵嫂(つま)その寺(てら)の
庫裏(くり)にすみ
ゐて
檀越(だんおつ)の米銭(べいせん)を
かすめ新死(しんし)の
屍(しかばね)の皮(かは)を
はぎて
餌食(ゑじき)と
せし
とぞ
三途河(さうづがは)の脱衣婆(だつゑば)
よりも
おそろし〳〵