翻刻
つひにはたすともなくて通られきさるをその子幸孝うけ
つき【受け継ぎ】ていか侍ほい【本意】のことはたしてんと こゝろはせめくりて
ものしつる そのまきれに【紛れに】いかにとりおとしけんとしころ【年頃】かいつめ
おかれしうちなる一巻をうしなひきさるを本所石原のわ
たりなる番場てふ所に妙源寺海煉上人とてたふとき【貴き】ひし
りおはしけり もとより世中ハおもひはなれて山水の清くいさき
よきに心をすましことはの花のたへにかくはしきを衣にしめて
もてあそひものとし玉へるか 常に我つふミ【文】ならしおはするついてに
この二年はかりをち【遠=昔】なりきわかすむてらの事なと委しうねも
ころ【懇ろ】にとひあきらめて【明めて】かへりし人のわすれたりけん かゝる一巻
なんおちゐたる あはれかはかり【かばかり】にも心いれたるものをとおもへは
いとほしくて月ころすきやうしありく【歩く?】にもくひにかけて【首に掛けて?】
その人と見しりたる人あらハ かへしあたへてんとおもへと
みちかひ【見違い】にてもさる人とおほえたるはなく哥よむ人〻
にあふときハ かゝることおもひたちたる人やあるととひあ
はせ【問い合わせ】なとしつれとふつに【全く】たつね出ねは今萬侍にかくハ
おもへとかひなく かくはかりにもこゝろつくしたるものをと
かたられたれはい侍そハおのかしりたる人になんといへは
ひしりよろこほひてそ【其】はとしころのほい【本意】かなひたり いと
うれしさらハ【さあらば】 かへしやりてん その人にたかはすハ【違いなければ】とらせ給
ひてよとて ふところより出されたるをやかてミつからもてゆ
きてけふハしか〳〵の事ありて来つといふを湯あミし