翻刻
鬼市はたん〳〵せ
けんひろくたてられ
ければ所々の
女郎又は下女むすめ
うば手代なとの
にげかくれしてゆくへ
しれざるも鬼市
をたのむとさつそく
ありかゞしれそのうへ
それ〳〵にわけをつけ
てすましけるゆへいよ
〳〵人に用ひ
られける
今こども
あそびのかくれんぼにかくれたものをたづね
たすやくをおにとなづけたるは此いわ
れならんか
きやん【侠】きたりてこれおやぶん
もしなんでもあの女を三日でも
女ぼうにもたねへけりややろうが
たちやせぬじやがひても【邪が非でも】もらつて
下さいおやぶん
アゝいゝさけふおれがしんち【おそらく深川の新地、岡場所のひとつ】からすそ
つぎ【裾継、深川にあった岡場所】へわたればぐつとすむのさ
きをもむな〳〵
鬼神におうとうなし【横道なし】
のたとへのごとく鬼市
はしごくたゞしきもの
にて所々
のでいりにたのまれ
それ〳〵にわけもつけ
人のためにもなりける
ゆへほう〴〵よりれいもつ【礼物】も
あれどすこしもうけずひんにくらしける
ゆへ女ぼうは人のいるいなどちんしごとし【賃仕事】し
けるがこれも鬼市が心には男
たるものが女ぼうに人しごとさせては
ぐわいぶん【外聞】がわるい
としかるゆへ
女ぼうもぜひなく
やめてみたれ
どもひまに
くらすも
むだことゝ鬼市
が留守の時は
し事をはじ
めるこれなん
鬼のるすの
せんたくなるべし
うちでかへらぬうち
はやくのりをつけ
てしまひ
たい