翻刻
下ル船筋度々難風 ̄ニ逢諷戻り或は汐懸り
四月廿二日伊豆国外ト浦を諷出し沖合 ̄ニ おゐて
戊亥風 ̄ニ吹変し逆浪(ケキロウ)度々櫓(ヤクラ)洗ひ助命危く
一同精魂限り働くと云とも凌難く乗組 鬢髪(ヒンハツ)
を切払ひ神仏を祈り風 ̄ニ任せ吹流るゝ事凡
四日四夜時 ̄ニ雪降り出し荒涼(スサマシキ)吹雪(フヽキ)する也否
たちまち梶打折れ四双浪に船は宙(チウ)に揉(モミ)
上ヶ■り落し汐けふりに洑沉(フクシン)し存亡爰 ̄ニ
止ルけれは船中申合 檣(ホハシラ)伐捨綱碇を引カセ
数日漂流す然るに船中貯水呑切らし困窮
最早逸るに道なくひたすら神仏 ̄ニ祈誓し
忙然として月に漂ふ海月の如く手を空敷流れ