翻刻
大地震末代噺種
【上段】
《箱:尾州名古屋》嘉永(かえゐ)七寅十二月四日
五月大地しん二三分通りの
そんじ市中(しちう)土蔵(どぞう)家居(いへゐ)
多(おほ)く崩(くづ)る七|軒町(けんちう)の辺(へん)寺
の大門くづる又火(ひ)よけばし
津波(つなみ)来(きた)り小舟(こふね)材木(ざいもく)押上(おしあげ)
舟(ふね)そんじけが人少々あり
○知多郡(ちたごふり)新田(しんでん)何(いづ)れも大津(おほつ)
波(なみ)壹丈五尺二丈|位(くらい)の浪(な)み
打寄(うちよ)せ堤(つゝみ)三ヶ所|切(きれ)る須崎(すさき)
大井(おほい)亀崎(かめざき)辺(へん)家(いへ)崩(くづ)る
《箱:江州八幡》三四分通り損じ
家(いへ)崩(くづ)る宮寺大そんじ
○彦根(ひこね)同やうの荒(あれ)○長濱(ながはま)
三分通崩る○醒(さめ)ケ井大損じ
【下段】
養老山(やうらうざん)抜(ぬけ)崩(くず)れ清水(しみづ)大ひに
濁(にご)る○加納(かのう)大垣(おほがき)七八分損じ
此近在(きんざい)皆(みな)同やう也○須股(すのまた)
おこし過半(くははん)崩る川岸(かはぎし)地破(ぢわれ)て
泥土(どろつち)吹出(ふきでる)○萩原(はぎわら)二分通り
そんじ○稲葉(いなば)八分通り損じ
《箱:信州松本》大地しんにて町家(まちや)
向(むか)ひ側(がは)の軒(のき)と打合(うちあひ)大(たい)てい
七八分通り倒(たふ)る残り皆損じ
○善光寺(ぜんくわうじ)大荒すべて信州(しんしう)
路(ぢ)ぢしんはげし
《箱:勢州山田》ぢしん強(つよ)けれども
両宮(りやうくう)末社(まつしや)に至(いた)る迄少しも
損ぜす是(これ)全(まつた)く神徳(しんとく)の不(ふ)
思議(しぎ)なりと信(しん)し奉りぬ