翻刻
なすばかりのまつもどきとかけて
いさみのかみのけとゝく
心は あぶらげがない
【松擬 : 茄子を細かく切り油を加えて煮た料理ヵ】
【勇み : 任侠の人たちヵ。鬢付け油を使わず髪の毛をまとめることが多かったらしい】
かうもりとかけて
ぐはすとうのくち火さしととく 【ガス灯】
心は日ぐれからいでる
海うんばしの五かいととく 【かけて の間違いヵ】
大ゆきしはすととく
心は 菜(な)がたかい
【海運橋の五階 : 海運橋横の明治六年開業の第一国立銀行。変則的な五階建ての和洋折衷建築】
【立派な高層建築で名が高いと、大雪の師走で菜の値段が高いをかけている】
むしつのかきぞめとかけて
てんぼうのしつかきととく
心は かきたくてもかけぬ
【むしつ : 無筆、文字の読み書きができないひと】
【てんぼう : 手ん棒、けがなどで手や指がないひと】
【しつかき:湿掻、疥癬(かいせん)のできている人。また、梅毒を病んでいる人(日本国語大辞典)】
あそび人とかけて
ふうりんととく
ねんぢうぶら〳〵してゐる
むかしばなしとかけて
ゆみはまととく 【破魔弓ヵ】
心はぢゞいばゞあがつきもの
【ゆみはま:弓破魔、「はまゆみ(破魔弓)」に同じ(日本国語大辞典)】
いんらんのだうらくむすめ【淫乱の道楽娘】とかけて
つみのふかいゆうれいととく
心はぢごく【地獄 : 遊郭、売春宿の別称】へおつる
あいそづかし【愛想尽かし】とかけて
洋ふくととく
心は そでない【袖にする : つれなくする、より転じて「つれない扱いを受ける」の意】