翻刻
さるほとに見こし入道雪女は今金時を
たづねて立出けるがみちすがらふぜいか
ないとてしばゐでする道行の
おもいれにて道具立の柳ばし
ものすごき
なりもの
いりて
此二景め
のまく
あく
〽ばけ
ものゝ
ため
にや
今の
金時を
たづ
ぬる
むねの
こは
ければ
世を
しのふ
身の
あとや
さき人目を
つゝむほう【注①】
【注① 「人目を包む」とは人目をはばかって隠れること】
【ほうかぶりにつなげるためにわざと「包む」と洒落ています。】
【左ページへ】
かぶりかくせど
白きゆき女なれぬ
あゆみを入道が
いたはる身さへ雪
ゆゑにあたゝめたらば
きえようとこゝろつかひに
あし引の山の手さしてゆく
そらの月もくもりてよひ
やみにいまみのしよさ【所作】で
ゆくむかふへちからかみ【注②】
りゝしく六尺はかりの
ぼうをかたげしぶ
うちは【団扇】にごふん【胡粉】
をもつて金の
字(じ)を白〳〵とかき
たるをもち
ごんぜんかご【御膳籠、方形の竹かご】にも
おなじく金の字
をしるしたるは
ばけものゝくびを入るゝ
よういにやといかめしく
大きやうなるこゑにて
きんとき〳〵とよび
きたれば入道ふうふ
きもをつぶしくさ
むらにわけいりていき
をころしてゐたりしはをかしかりける次第なり
【左ページ下 箱】
金時
さとう
いり
【左ページ下 足元】
きんときや〳〵
【注② 力紙、歌舞伎用語で、これを付けていると力持ちを示す】