翻刻
木 賀 へ 一里十八丁 堂が島へ 一里八丁
芦の湯 へ 二里廿三丁 熱海へ 八里三十丁
修善寺 へ 九里三十丁 大山へ 五里
〇|塔(たふ)の|澤(さは)
|旧道(きうだう)は|湯本(ゆもと)より山伝(やまつた)へ十二丁ありしが|近年(きんねん)|早川(はやかは)に
|添(そふ)て|新道(しんたう)を開(ひら)きしゆゑ|道(みち)|平坦(へいたん)にして|僅(わづか)四丁|余(よ)なり
|此地(このち)|南(みなみ)に|古城山(こしろやま)|聳(そび)へて|千尋(ちひろ)の|翠(みどり)を|盈(たゝ)すみ|北(きた)は|塔(たう)の|峰(みね)|峭(けは)
|立(だち)て|石(せき)|渓(けい)|両山(りやうざん)の|間(あいだ)を|遶(めぐ)り|雪岡幽澗(せつかういうかん)の|上(うへ)に|望(のぞ)む|西(にし)に
|松露(しやうろ)の|滝(たき)を|受(うけ)て|騒客(さうかく)の|吟稿(ぎんかう)を|洗(あら)ひ|東(ひがし)に|深沢(しんたく)の|飛泉(ひせん)
|漲(みなぎ)りて|隠士(ゐんし)の|耳根(みゝ)を|潔(きよふ)す|霞(かすみ)|引(ひ)く|春(はる)は|野径(やけい)の|遠(たほ)きを
|忘(わす)れて|蕨(わらび)を|折(を)り|花(はな)を|尋(たづ)ね|山畑(やまはた)に|麦苅(むぎかり)|夏(なつ)は|石澤(せきさは)|沙汀(しやてい)
塔 の潺湲(せんくわん)たるを|弄(ろう)して|酷暑(こくしよ)
の も|覚(おぼ)えず|月(つき)ある|秋(あき)は|鹿(しか)の
沢 |音(ね)を|枕(まくら)に|伴(ともな)ひて|暁天(あかつき)の|露(つゆ)
図 |冷(ひやゝ)かなり|風(かぜ)|寒(さむ)き|冬(ふゆ)は|雪層(せつそう)
|巒(らん)に|満(みち)て|玉(たま)の|枝(えだ)に|剃(そ)り|白(しろ)
【絵】 |銀(かね)の|臺(うてな)を|?(まう)く七|湯(たう)の|中(うち)に
て|地境(ちきやう)|広(ひろ)くして|風景(ふうけい)|最(もつと)も
|好(よ)き|地(ち)なり|緒(すべ)て|此間(このあひた)の|山(やま)
|坂(さか)を|湯坂(ゆさか)と|云(いへ)り
|同所(どうしよ)は|戸数(こすう)三十|余戸(よこ)にし