翻刻
卿(きやう)明(みん)人|舜水(しゅんすい)と共(とも)に此(こゝ)に逍遥(せうよう)し給(たま)ひし時(とき)此名(このな)を初(はじ)
めて呼(よば)せられしとなり
玉緒(たまのを)の瀧(たき)の湯(ゆ) 玉緒橋(たまのをはし)の左(ひだ)りの隅(すみ)にありて秋山(あきやま)|弥(や)
五兵衛の持(もち)なりしが目下(もくか)|潰(つぶ)れてなし
千歳橋(ちとせばし) 湯本(ゆもと)より塔(たう)の澤(さわ)に入(い)るの橋(はし)にて洋風(ようふう)なり
阿弥陀寺(あみだでら) 塔(とう)の峯(みね)の麓(ふもと)より登(のぼ)る事(こと)十八丁にして一
宇(う)の草堂(さうだう)あり又五丁|登(のぼ)れば単誓(たんてい)上人(しゆうにん)の蔵(こも)り給(たま)ひ
しといふ巌屋(いはや)あり之(これ)を奥(おく)の院(いん)といふ岩窟(がんくつ)|暗(くら)く松(たい)
明(まつ)を燈(とも)して入(い)るに四|方(ほう)瞑曚(めいもう)として更(さら)に咫尺(しせき)を弁(べん)
せずといふ
女夫石(めおといし) 塔(たう)の澤(さわ)より太平台(おほひらだい)へ登(のぼ)る事(こと)十町|許(ばか)りにて
路(みち)の傍(かたは)らに二ッ|双(なら)びし大石(たいせき)なり
姫(ひめ)の水(みづ) 塔(たう)の澤(さは)と宮(みや)の下(した)との間(あいだ)太平台(おほひらだい)の入口(いりぐち)にあ
り昔(むかし)北條家(ほうでうか)の息女(そくじょ)が態々(わざ〳〵)此水(このみづ)を取寄(とりよせ)て化粧(けしやう)に用(もち)
ひしといふ極(きわ)めて冷水(れいすい)なり
○堂(だう)が島(しま)
塔(たう)の澤(さは)より嶮岨(けんそ)を登(のぼ)る事(こと)稍(や〻)一|里(り)山に傍(そ)ひ岨(そ)を伝(つた)ひ
て平坦(へいたん)なる所(ところ)に出(い)づくを太平台(おほひらだい)といふ人家(じんか)凡(およ)そ二
十|餘戸(よこ)もあり酒蕎麦(さけそば)などを鬻(ひさ)ぐ家(いへ)ありて萬事(ばんじ)不自(ふじ)
由(ゆう)なし夫(それ)より半里(はんり)にして宮(みや)の下(した)に至(いた)る然(しか)るに目今(もくこん)