翻刻
|雑樹(ざつじゆ)一|株(かぶ)|生(しやう)ぜりといふ
しらべの|瀧(たき) |宮(みや)の|下(した)|奈良屋(ならや)の|底中(ていちう)より|落来(をちきた)る|水(みづ)に
て上下二|段(だん)となり|平松某(ひらまつぼう)|別荘(べつさう)の|前(まへ)に|落(を)つ此|瀧(たき)|日(につ)
|光(くわう)|霧降(きりふり)の|瀧(たき)に|能似(よくに)て|最(もつと)も|美観(びくわん)なり
|堂(だう)が|島(しま)八|景(けい) |醫王(いわう)|桜花(ざくらのはな)
たのめたゝ|誓(ちか)ひ|響(ひゞ)く|法(のり)の|花(はな)|春風(はるかぜ)|匂(にほ)ふ|山(やま)の|桜(さくら)を
|宮下(みやのした)|雲霞(うんか)
|夕(ゆふ)かけししげみづもとの|雲霞(くもかすみ)|晴行(はれゆ)く|山(やま)のかたはきの|宮(みや)
|夢窓薫風(むそうくんふう)
|掻(かき)きこもる|夏(なつ)の|岩根(いわね)の|箱根(はこね)|山風(やまかぜ)ににほへる|白糸(しらいと)の|瀧(たき)
|澗水流蛍(かんすいのりうけい)
|尋(たづ)ね|入(い)る|山路(やまぢ)くろして|瀧川(たきかは)の|今果(いまは)の|蛍(ほたる)|影見(かげみ)たるなり
|前山新月(まへやまのしんげつ)
|秋深(あきふか)し|此(この)山幸い|暮(くれ)やらぬ|烟(けふ)りに|過(すぎ)て|出(いづ)る|月(つき)かげ
|底倉幽虫(そこくらのいうちう)
|秋寂(あきさび)し|苔路(こけぢ)を|下(くだ)る|底倉(そこくら)の|岩根(いはね)によいる|松虫(まつむし)のこゑ
|条瀑寒盧(しばくのかんろ)
|朝嵐(あさあらし)|音(おと)もさへ|行(ゆく)|瀧(たき)の|瀬(せ)の|岸(きし)に|残(のこ)れる|霜(しも)の|枯(かれ)あし
|羊腸積雪(ようちやうのせきせつ)
|宵(よひ)の|間(ま)に|嶮(さが)しき|道(みち)に|降積(ふりつも)る|雪(ゆき)に|明(あけ)ゆく|谷(たに)の一むら