翻刻
より|宮(みや)の|下(した)を|眼下(がんか)に|見晴(みはら)せり
|村長(むらをさ) |当所(とうしよ)|藤屋(ふじや)|勘(かん)右衛門といふは|最(もつと)も|旧家(きうか)にて|底(そこ)
|倉村(くらむら)|堂(どう)が|島(しま)|宮(みや)の|下(した)|底倉(そこくら)一|村(そん)なり)に|年久(としひさ)しく|住居(すまゐ)
て|永正(ゑいしやう)の|頃(ころ)より|代々(だい〳〵)|此(この)|村長(むらをさ)として|今(いま)の|底倉(そこくら)に|往(いに)
|古(しへ)の|邸宅(やしき)|跡(あと)あり之を|扣(ひか)へ|屋敷(やしき)と|呼(よび)て|柵(さく)の|際(きは)の|上(かみ)
の|方(かた)に|大瀧(おほだき)|小瀧(こだき)|底(そこ)なし|等(とう)の|湯壺(ゆつぼ)を|貯(たくは)へりに|此家(このいへ)
には五|代(だい)|北条(ほうじやう)の|書物(かきもの)|豊太閤(ほうたいかふ)|及(およ)び|片桐等(かたぎりとう)の|直筆(ぢきひつ)|若(そこ)
|干(ばく)を|秘蔵(ひざう)せりといふ
|宮(みや)の|下(した)|八景(はつけい) |明神(みやうじん)が|嶽月(たけのつき)
|跡(あと)たれし|神(かみ)の|宮居(みやゐ)にやわらぐる|光(ひか)り|見(み)する|山(やま)の|端(は)の|月(つき)
|鷹巣山嵐(たかのすやまのあらし)
夜もすから|嵐(あらし)の|音(おと)も|鷹(たか)の|巣(す)の|麓(ふもと)の|庵(いほ)の|旅寝(たびね)にぞきく
|豆海遠帆(づかいのえんぽ)
|木(こ)の|葉(は)かと|見(み)るも|春(はる)けし|伊豆(いづ)の|海(うみ)の|浪路(なみぢ)に|通(かよ)ふあまの|釣舟(つりふね)
|堂島瀑布(たうがしまのたき)
|濁(にご)りなき|瀧(たき)の|流(なが)れを|心(こゝろ)にてすみけん|人(ひと)の|跡(あと)|慕(した)ふなり
|底倉啼猿(そこくらのていゑん)
|湧(わき)きかへる|出湯(いでゆ)の|山(やま)の|烟(けふ)りにも|己(をの)が|思(おも)ひや|猿猴(ましら)なくらん
|早川鳴?(はやかはのめいずゐ)
|唐琴(からこと)の|調(しら)べとそ|聞(き)く|早川(はやかは)に|流(なが)るゝ|水(みづ)の|絶(たへ)ぬ|響(ひ)きは