翻刻
東明院鐘(とうみやうゐんのかね)
月(つき)も今出(いまいで)ぬる方(かた)にあきらけそ名(な)におふ寺(てら)の鐘(かね)ぞきこゆる
宮城野萩(みやぎののはぎ)
誰(たれ)も来(き)て明(あか)すぞこゝに宮城野(みやぎの)の名(な)ながらうつす秋萩(あきはぎ)の花(はな)
○底倉(そこくら)
底倉(そこくら)は宮(みや)の下(した)の町續(まちつ〲)きにて南北(なんぼく)に狭(せま)く東西(とうざひ)に長(なが)し
宮(みや)の下(した)堂(どう)が嶋(しま)も共(とも)に底倉(そこくら)の一|郷(ごう)にて総名(そうみやう)底倉村(そこくらむら)な
り就中(なかんづく)此(この)温泉(おんせん)ある所(ところ)は地方(ちほう)高(たか)く四方(しほう)山(やま)にて露(つゆ)蔵(こ)め
烟(けふ)り蒸(むし)て空翠(くうすゐ)袂(たもと)に満(みて)り後(うしろ)は鷹巣(たかのす)の秀嶺(しうれい)見事(みごと)に眸(ひとみ)を
凝(こら)し前(まへ)は早川(はやかは)深溪(しんけい)の富(と)むに魂(たまし)ひを飛(とば)せり抑(そもそ)も此谷(このたに)
底倉之圖
川(かは)は緑樹(りょくしゆ)冥々(めい〳〵)として只(ただ)重(ちゆう)
陰(いん)の中(なか)岩間(いはま)に咽(むせ)ぶ水音(みつをと)の
み聞(きこ)ゆれば浅倉(そこくら)の名(な)も又(また)
誣(しゆ)べからず
湯宿(ゆやど) 梅屋(うめや)|収(しう)太郎
蔦屋(つたや)|平(へい)左ェ門
仙石屋(せんごくや)|丈助(じゆうすけ)
総(すべ)て此(この)所の湯(ゆ)は痔疾(ぢしつ)を蒸(む)
すに極(きわ)めて功(こう)あり故(ゆゑ)に家(いへ)
毎(ごと)に湯壷(ゆつぼ)の傍(かたへ)に之(これ)を蒸(む)す