みんなで翻刻ver1

コレクション: STAGE1

箱根温泉誌 全 - 翻刻

箱根温泉誌 全 - ページ 33

ページ: 33

翻刻

 絶景(ぜつけい)の地(ち)なり 蛇骨川(しやこつがは)  底倉(そこくら)より木賀(きが)への道(みち)四五丁|行(ゆ)くと車屋(くるまや)あ  り其前(そのまへ)を流(なが)る 川(かは)をいふ夏(なつ)の頃(ころ)夕立(ゆうだち)などの後(のち)此(この)  川(がは)の辺(ほと)りより氣(き)の昇(のぼ)る事(こと)あり土人(どじん)適々(たま〳〵)見(み)し者(もの)あ  りといふ此辺(このへん)より蛇骨(じやこつ)夥多(おびたゞ)しく出(いづ)るよし 柵(さく)の澤(さは)  蛇骨川(じやこつがは)の下流(かりう)にて底倉(そこくら)の谷底(たにそこ)石風呂(いしふろ)の傍(かたは)  らに在(あ)り此處(このところ)方(ほう)七八間もあるべき深淵(しんえん)にて瀧(たき)四  方(ほう)より漲(みなぎ)り落(を)ち水色(みづいろ)藍(あい)の如(ごと)く極(きわ)めて物凄(ものすご)き處(ところ)な  り近頃(ちかごろ)樵夫(きこり)ありて其上(そのうへ)の頂(いたゞ)きにて高(たか)さ二|丈餘(じやうよ)の  概(けやき)【本字は槻か】の大(たい)木を伐(きり)しに誤(あやま)つて取落(とりおと)せしが此柵(このさく)の澤(さは)に  落(お)ち入(いり)ぬされど聊(いさ〱)かの枝葉(しよう)だに見(み)ず其後(そののち)此所(このところ)大(たい)  雨(う)降続(ふりつ〲)き蛇骨川(じやこつがは)の水増(みづまさ)りし時(とき)浮(うか)み出(いで)しを所(ところ)の者(もの)  辛(から)うじて揚(あげ)しとぞ今(いま)溪川(たにかは)の岸辺(きしべ)に引寄(ひきよせ)あり又|柵(さく)  の澤(さわ)といふ事(こと)は往昔(むかし)此渕(このふち)に大蛇(だいじや)住居(すまゐ)人民(じんみん)を悩(なやま)し  ければ村長(むらおさ)下知(げち)を伝(つた)へて其(その)傍(かたへ)に柵(さく)を結(むす)び大蛇(たいしや)を  退治せしにぞ夫(それ)よりして此渕(このふち)を斯(か)く名号(なづけ)しと又  此辺(このへん)よりも蛇骨(じやこつ)出(い)づ東西(とうざい)三十|間程(けんほど)の岩根(いはね)の裾(すそ)を丈(たけ)七  尺(じやく)巾三尺|許(ばか)りに堀穿(ほりうが)ち次第(しだい)に堀入(ほりいり)て求(もと)むると云(いふ) 北條(ほうじやう)出城(でじろ)の跡(あと)  底倉(そこくら)の後(うしろ)鷹巣(たかのす)山といふは天正(てんしやう)の頃(ころ)  北條(ほうじやう)氏直(うちなほ)の出城(でじろ)を構(かま)へし所(ところ)にて今(いま)高(たか)さ四五尺の