翻刻
|古土手(ふるどて)の|跡(あと)あり又|坂穴(さかあな)と|呼(よ)ふ|所(ところ)もあり|大手口(おほてぐち)は
|日燈(ひともし)山の|裏手(うらて)の|方(かた)なりとぞ
|袖摺石(そですりいし) |底倉(そこくら)の|上(かみ)|元(もと)|車屋(くるまや)|当時(とうじ)|車(くるま)の|川(かは)の|手前(てまへ)にあり
|隆朝(たかとも)の影など|記(しる)しあり
|小涌谷(こわきだに) |底倉(そこくら)より|芦(あし)の|湯(ゆ)へ|行道(ゆくみち)の|左(ひだ)りの|傍(かたは)らの|路(みち)
に|入(い)る|事(こと)|凡(およ)そ六七丁|許(ばか)りにて|小涌谷(こわきだに)の|半復(はんふく)に|出(いづ)
|爰(こゝ)に|鼻欠地蔵(はなかけぢぞう) |閻魔地蔵(えんまぢざう) |観音(くわんをん)の|石像(せきぞう)あり|夫(それ)よ
り|登(のぼ)る|事(こと)十二三丁にして|地(ち)一|面(めん)に|熱(あつ)し|巌(いはほ)の|間(あひだ)よ
り|泥湯(どろゆ)たまぎり|熱(にゆ)る|所(ところ)|凡(およ)そ十四五ケ|所(しよ)|中(なか)にも|至(いた)
つて|強(つよ)く|熱(にゆ)る|所(ところ)二ケ|所(しよ)あり|清(せい)左衛門|地獄(ぢごく)といひ
|早雲地獄(さううんぢごく)といふ|其他(そのた)|餅屋(もちや)|紺屋(こんや)|酒屋等(さかやとう)の|名(な)あり|地(ち)
|気(き)|少(すこ)しづゝ|違(たが)ひて|涌(わく)ところの|泥湯(どろゆ)|各々(おの〳〵)|色(いろ)を|異(こと)に
せり|此辺(このへん)の|土色(つちいろ)|青黄(あほき)にして|悉(こと〴〵)く|硫黄(いわう)の|香(か)あり|鋳(い)
|物師(ものし)|之(これ)を|取(とり)て|土形(どかた)に|用(もち)ゆるに|粘(ねば)り|強(つよ)く|甚(はなは)だ|良(よし)と
|云(いへ)り|元(もと)|此辺(このへん)を|小地獄(こぢごく)と|唱(とな)へしが|明治(めいぢ)六年八月|聖(せい)
|上宮(じやうみや)の|下(した)へ|行幸(ぎやうかう)|在(あら)せられし|時(とき)に|涌谷(わきたに)と|改称(かいしやう)せら
れ又|此奥(このをく)の|大地獄(おほぢごく)を|大涌谷(おほわきだに)と|改(あらた)めらる|近頃(ちかごろ)|小涌(こわき)
|谷(だに)に|湯宿(ゆやど)|二軒(にけん)|築造(ちくざう)し|三河屋(みかはや)|宝来屋(ほうらいや)といふ|各々(おの〳〵)|西(せい)
|洋料理(ようれうり)|玉突等(たまつきとう)の|備(そなへ)あれど|未(いま)だ|此湯(このゆ)に|浴(よく)する|者(もの)|少(すく)
なし|此地(このち)は|西(にし)の|方(かた)|出山(いでやま)|乾(いぬひ)の|方(かた)|明神(みやうじん)が|嶽(たけ)|麓(ふもと)は|宮城(みやぎ)