翻刻
神代杉(じんだいすき)を合(あは)せしのみなり故(ゆゑ)に此楼(このろう)を神代楼(じんだいろう)と云(いふ)
又|向(むか)ふの離(はな)れ座敷(ざしき)は庭中(ていちう)に池(いけ)ありて上(うへ)より飛泉(ひせん)
落来(をちきた)る此(この)飛泉(ひせん)を避邪泉(へきじやせん)といふ其(その)長(なが)き事(こと)宛(あたか)も山上(さんじやう)
より数丈(すじやう)の布(ぬの)を晒(さら)したるが如(ごと)し此(この)庭中(ていちう)に左(さ)の碑(ひ)
面(めん)を建(たて)てり
宮内大輔従四位勲三等杉孫七郎撰並篆額
箱根有温泉七號曰七湯木賀其一也宮原新太郎
世家於此構樓引温泉於室以待浴客庭有懸泉由
翠辟而下二十餘尺状若垂帛挹而飲之甘洌異常
蓋名泉也明治九年夏余以避暑往遊為溪山之間
景致幽邃意頗楽之一日新太郎指懸泉曰是未有
所名願命而銘之余諾而帰遂命曰辟邪為之銘曰
惟茲清泌 瓊漿玉液 仙霊所護 百萬遠跡
明治十五年十月 小西正陰書 志鎌三秀刻
○温泉(おんせん)の性質(せいしつ) 硫黄(いわう) 石炭(せきたん)の二|氣(き)を含(ふく)めり
○主治(しゅぢ)功能(こうのう) 帯下(こしけ) 崩漏(ぼうろう) 痔疾(じしつ) 腰痛(こしいたみ) 神経病(きざし)
傷冷毒(ひへしやう) 脚氣(かつけ)
○名跡(めいせき)
木賀(きが)善司(ぜんし)の由来(ゆらい) 往昔(むかし)源|頼朝公(よりともこう)の家臣(かしん)に木賀(きが)善司(ぜんじ)
吉成(よしなり)と云(いへ)る人ありしが齢(よわい)半(なかば)過(すぐ)る頃(ころ)俄(にはか)に病(やまひ)に罹(かゝ)り