翻刻
し|曽我(そが)兄弟の|墓(はか)といふは|所々(しよ〳〵)にあり|酒匂川(さかはかは)の|東(ひがし)
|曽我中村(そがなかむら)に|昔(むかし)|兄弟(きやうだい)の|住(すみ)し|跡(あと)とて|墳墓(ふんぼ)あり又|富士(ふじ)
の|裾野(すその)に一ケ|所(しよ)|箱根権現(はこねごんげん)の|社地(しやち)に一ケ|所(しよ)あり|此(この)
|内(うち)|何(いづ)れが|真跡(しんせき)ならん|此辺(このへん)|諸(すべ)て|芒々(ぼう〳〵)たる|荒野(あれの)にて
|人家(じんか)一|宇(う)もなき|中(なか)に|幾許(いくばく)の|星霜(せいさう)を|経(へ)たりけん|苔(こけ)
|蒸(むせ)し|古墳(こふん)|此彼処(こゝかしこ)にありて|実(じつ)に|懐古(くわいこ)の|情(じやう)|起(おこ)りぬ|察(さつ)
するに|爰等(こゝら)は|昔(むかし)一の|大寺(だいじ)ありし|跡(あと)ならんか
二十五|菩薩石(ぼさついし) |曽我(そが)の|墓(はか)より|行(ゆ)く事|僅(わづか)にして|左(ひだ)り
の|方(かた)に三|稜(りよう)ある|岩(いは)あり之に|地蔵仏(ぢざうぶつ)三|体(たい)を|彫付(ほりつけ)あ
り|夫(それ)より|往事(ゆくこと)三丁|許(ばか)りにして|右(みぎ)の|方(かた)に|弘法大師(こうぼふたいし)
二十五|菩薩(ぼさつ)岩と|記(しる)した
る|標石(ひやうせき)|立(たて)り又|叢(くさむら)の|中(うち)を
二三|歩(ぼ)|行(ゆけ)ば|大岩(おほいは)ありて 多
|是(これ)にも|地蔵(ぢざう)を|彫付(ほりつけ)|先(さき) の 田
三|体(たい)と|合(がつ)して二十五|体(たい) 【絵】 満
ありしとぞ|土人(どじん)いふ|此(この) 仲
|仏(ほとけ)を|数(かぞ)へ|見(み)るに|幾度(いくたび)|数(かぞ) の
へても|同(おな)じからずと|此(この) 墓
|岩(いは)の|形(かたち)|至(いた)つて|雅致(がち)にし
て|苔(こけ)|深(ふか)く|所々(しよ〳〵)に|山拓(さんたく)|生(おひ)