翻刻
なし再(ふたゝ)び一|杯(はい)を傾(かたむ)け又|運動(うんどう)して后(のち)一|杯(はい)を尽(つく)すべし
○|温泉(おんせん)を|内服(ないふく)するの時(とき)は|朝飯前(あさめしまえ)或は|午後茶(ごごちや)を喫(きつ)す
る|前(まへ)を最(もつと)も良(よし)とす又之を服(ふく)して後(のち)三十|分(ふん)或は一|時(じ)
間(かん)を過(すぎ)さる間(あいだ)は決(けつ)して|飲食(いんしよく)すべからず|若此時間(もしこのじかん)を
待(また)ずして直(すぐ)に水(みづ)を飲(のみ)て|胃中(ゐちう)に|濫溢(らんいつ)するに至(いた)らしむ
る時(とき)は之(これ)が為(ため)に|劇症(げきしやう)を醸(かも)す事あり慎(つゝし)むべし○|入浴(にうよく)
の|時日(じじつ)は|病症(びやうしやう)によりて|一定(いつてい)し難(かた)しと雖(いへ)ども凡そ三
|週間(しうかん)を|通規(きまり)とす然(さ)れども|病症(びやうしやう)によりては之を二|倍(ばい)
し又は三|倍(ばい)し又|長病(ちやうびやう)の人は|適宜(てきぎ)の|気候(きこう)に至(いた)る毎(ごと)に
同(おな)じ|温泉(おんせん)に赴(をもむ)く|事両(ことりやう)三年に至(いた)るを可(よし)とす○|温泉治(おんせんぢ)
療(りやう)うを行(おこな)ふべき|至当(したう)の|時期(とき)は之(これ)を|泉期(せんき)と号(なづ)け|大抵(たいてい)六
月一日より十月一日に終(おは)るを以(もつ)て常(つね)とす然(さ)れども
之は|旧時(おうし)の|陋説(ろうせつ)にして|方今(いま)は|各国(かくこく)とも之(これ)を廃(はい)した
り実(じつ)に|温泉(おんせん)に浴(よく)して|病痾(びやうあ)を治(ぢ)し|身体(しんたい)を|保全(まつたふ)するの
|目的(もくてき)を以(もつ)て論(ろん)ずる時(とき)は|年中常(ねんぢうつね)に|其好時節(そのこうじせつ)にして決(けつ)
して|此区限(このくかぎ)りあるにあらざるなり
○|名跡(めいせき)
|早川(はやかわ) |水源(すゐげん)は|箱根(はこね)の|湖水(こすゐ)より出(いで)て|木賀堂(きがだう)が|島塔(しまたう)の
沢(さは)を遶(めぐ)り|湯本(ゆもと)を過(す)ぎ|三枚橋(さんまいばし)に到(いた)り|須雲川(すくもがは)と合(がつ)し
て|小田原(おだはら)の海(うみ)に注(すゝ)ぐ
現代語訳
なして再び一杯を飲み、また運動して後に一杯を飲み干すべきである。
○温泉を内服する時は、朝食前あるいは午後の茶を飲む前が最も良い。また、これを服用した後、30分あるいは1時間を過ぎない間は決して飲食してはならない。もしこの時間を待たずに直ちに水を飲んで胃中に溢れさせるようなことになれば、これが原因で激症を引き起こすことがある。慎むべきである。
○入浴の期間は病症によって一定し難いが、およそ3週間を基準とする。しかし病症によってはこれを2倍にし、また3倍にし、また慢性病の人は適切な気候の時期になるたびに同じ温泉に赴くことを2、3年に至るまで続けるのが良い。
○温泉治療を行うべき適当な時期は、これを泉期と呼び、大抵6月1日より10月1日に終わるのを常とする。しかしこれは旧時の古い説であって、現在は各国ともこれを廃止している。実際に温泉に浴して病気を治し、身体を保全するという目的を以って論ずる時は、年中常にその好時節であって、決してこの区限があるものではない。
○名跡
早川 水源は箱根の湖水より出て、木賀堂ヶ島塔ノ沢を巡り、湯本を過ぎ、三枚橋に至り、須雲川と合流して小田原の海に注ぐ。
英語訳
Then one should drink another cup, exercise again, and then finish the third cup.
○When taking hot spring water internally, it is best to do so before breakfast or before drinking afternoon tea. After taking it, one must absolutely not eat or drink anything for 30 minutes to one hour. If one does not wait this time and immediately drinks water, causing overflow in the stomach, this may cause severe symptoms. One must be cautious.
○The duration of bathing varies depending on the medical condition and cannot be fixed, but approximately three weeks is the standard. However, depending on the condition, this may be doubled or tripled, and for people with chronic illnesses, it is good to visit the same hot spring whenever suitable weather arrives, continuing for two to three years.
○The appropriate period for hot spring therapy is called the "spring season" and typically runs from June 1st to October 1st. However, this is an old theory from former times, and nowadays all countries have abandoned this practice. In reality, when considering the purpose of bathing in hot springs to cure illness and maintain bodily health, every season throughout the year is a good time, and there are definitely no such limitations.
○Famous Sites
Hayakawa River: Its source emerges from Lake Hakone, winds around Kigadō-ga-shima Tōnosawa valley, passes through Yumoto, reaches Sanmai Bridge, merges with Sukumo River, and flows into the sea at Odawara.