翻刻
|早川尻(はやかはじり) |早川(はやかは)の|下流(かりう)をいふ|往古(むかし)|頼朝卿(よりともきやう)三百|騎(き)を引(ひき)
具(ぐ)して|早川尻(はやかはじり)に陣(じん)し給(たま)ふ|早川党(はやかはたう)|此処(このところ)は|軍場(ぐんば)には
悪く候なり|湯本(ゆもと)の方(かた)より|敵山(てきやま)を越(こえ)て中(ちう)に|取込(とりこめ)ば
由々しき|大事(だいじ)なりと申しければ夫(それ)より|米咬石橋(こめかみいしばし)
といふ所(ところ)に陣(じん)を替(かへ)給ふ事|盛衰記(せいすゐき)に見(み)えたり亦(また)承(しよう)
久(きう)の乱(らん)に|甲斐(かひ)|参議(さんぎ)|中将(ちうじやう)|範茂(のりしけ)を|北條(ほうでう)|朝時(ともとき)搦(から)め取(とつ)
て|鎌倉(かまくら)へ下(くた)るとて此(この)|早川尻(はやかはじり)にて|水中(すゐちう)へ沈(しづ)め空(むな)し
くなし給(たま)ひぬ又|元弘(げんこう)の乱(らん)にも|参議(さんぎ)平|成輔(なりすけ)|朝臣(あそん)を
|此所(このところ)にて斬(きり)し事(こと)|太平記(たいへいき)にも見(み)えたり
|須雲川(すくもがは) |水源(すゐげん)を|二子(ふたご)と御要害(ごえうがい)と唱(とな)ふる山(やま)の|渓間(たにあい)よ
り発(はつ)し|火燃(ひともし)山の南(みなみ)を廻りて|畑宿(はたじゆく)より|須雲川村(すくもがはむら)に
至(いた)り|湯本(ゆもと)を過(す)ぎ|早川(はやかは)と合(がつ)して海(うみ)に入(い)る
|金湯山早雲寺(きんとうざんさうゝんじ) |湯本村(ゆもとむら)に在(あ)り|禅宗済家(ぜんしうさいか)|金湯山(きんとうざん)の額(がく)
は|朝鮮人(てうせんじん)|雪峰(せつほう)の筆(ふで)なり|仏殿(ぶつでん)の|釈迦仏(しやかぶつ)は|開山正宗(かいさんせいそう)
|大隆禅師(たいりうぜんじ)の|本願(ほんぐわん)にて|伊勢(いせ)新(しん)九郎|長氏(ながうぢ)|永正(えいしやう)十六年
の|建立(こんりう)なり
|北條(ほうでう)五代(だい)の墓(はか) |同寺内(どうじない)にあり|北條(ほうでう)新(しん)九郎|長氏(ながうぢ)は法(はふ)
名(みやう)を|早雲(さううん)といひ|伊勢(いせ)|平氏(へいし)の|末裔(ばつえい)にして|桓武天皇(くわんむてんはう)
|第五(だいご)の|皇子(わうじ)|葛原(かつらばら)|親王(しんわう)の|末孫(ばつそん)平|清盛(きよもり)の|後胤(こうゐん)なり相(さう)
州(しう)|小田原(をだはら)の|城主(じやうしゆ)として此(こゝ)に|菩提所(ぼだいしよ)を|建立(こんりふ)す|其頃(そのころ)