翻刻
雷|猛烈(モウレツ)の地震等は実(ジツ)に天地|無窮(ムキウ)の変動(ヘンドウ)なれば
人智(ジンチ)を以て其前兆を了知(リョウチ)する事あたふべからず
然る時は劇烈(ゲキレツ)の地震大あらし|竜巻(タツマキ)等の変災(ヘンサイ)を
予防(ヨバウ)する緊要(キンヨウ)の術(ジュツ)は他なし 唯|土蔵(ドゾウ)居宅(イタク)の造作(ゾウサク)格(カク)
外堅固(グハイケンゴ)にするに有るのみ然るに大地震は元来甚た
罕(マレ)なるものにて百年二百年に有るや無(ナシ)や唯火災のみ
年〻 屡有(クユウ)【左ルビ:シバ〻アリ】の物にして不時(フジ)に発するなれば人〻家作
に永久を謀(ハカ)らす徒(イタヅラ)に寒暑|雨雪(ウセツ)を凌(シノ)ぐまでの事
に思ひ土蔵は火災を防く迄にて事|足(タレ)りと心得別して
東都などは家宅の建方甚 粗略(ソリャク)なり|殊更(コトサラ)|時〻(ジ〻)の火
災に諸職人の作料(サクレウ)諸材木の値段(ネダン)累年(ルイネン)【左ルビ:マイトシ】高価(カウカ)に進(スヽ)
むが故に列侯(レツコウ)【左ルビ:大名】の冨(トミ)と雖|普請(フシン)経営(ケイエイ)【左ルビ:イトナミ】其|精細(セイサイ)を尽(ツクサ)ざる
処ありましてや市中の商家(シヤウカ)に至ては貧富(ヒンフ)とも爰(コヽ)
に心を用ひず凡(オヨソ)の見積(ミツモ)り一坪(ヒトツボ)何拾分と定め或は
入札に致し下直の方江|落札(ヲチフダ)にて投(ナゲ)に致し請負(ウケヲヒ)普
請にする事世上の風習(フウシフ)【左ルビ:ナラハシ】なれば其職人も亦|早業(ハヤワザ)を