翻刻
なひく” なにはもつらきうらなからそよよしあしとい
ひかたりて” ふたりあれはそなくさみぬ” 《割書:ふし| 》うきねの
とこのかちまくら【注①】” なみのよるにもなりぬれは” ともゝ
なきさのさよち鳥【注②】” ふきしほれたる” うら風にこ
ゑをくらふるなみのをと” すさきの松に” さきあれ
は” こすへをなみの” こゆるにゝてしほやのけふり一
むすひ” すゑはかすみにきえにほひ”ゆめち【夢路】に
にたる” うたかたの” なみのこし舟かすかにて” からろ【注③】の
をとの” とをけれは花に” なくねのかりかね” 我もみ
やこのこひしさにこゑをくらへてなくはかり” うきみ
なからもまき【注④】のとを” あけぬくれぬと” すきゆけ
はみとせに” なるはほともなし” 《割書:ことは| 》かくてなんによのなか
【注① 楫枕=楫を枕として寝る意から舟の中に泊まること。船旅。】
【注② 小夜千鳥=夜鳴く千鳥。】
【注③ 唐艪=中国風の艪。】
【注④ 真木=すぐれた木の意。杉や桧などの木の称。】