← 前のページ
ページ 100 / 134
次のページ →
翻刻
【右丁】
近き巷に彳(タヽスミ)てたゞ一心に神仏【佛】を祈り我家の焼落るを俟【まち】居たりしに
隣家なる某こゝに来り汝か妻は火中を出て用心桶の水を飲み居れり
疾く行て助てよといふされとも偽なりとて肯【うべな】はす然らは己連来
りて得さすへし迚程なく妻を脊負来れり驚てこれを見るに面部
こゝかしこやけたゞれ身内も聊疵を受たれと命恙なかりし小児は産落
したれとせんすへなくて火中に残して逃れ出たるよしなり其後治
療をくわへて活延る事を得たりとなむ
御賄六尺 無藤助太郎殿話
〇小日向水道町桔梗屋といへる油屋の娘下女とゝもに土蔵の壁落し
時土の下に成りたり三尺程の下を掘て娘は助り下女は死す此家より
【左丁】
あたりの貧人へ米三升ツヽ施せしとそ
新乗物町 福島三郎右衛門殿話
〇銀座人受払【拂】役泉谷七郎兵衛か妻娘乳母三人同し枕に潰家の下に
成りたる娘のみ中に寐てありしが助り左右の二人圧【壓】にうたれて死す
本郷 冨岡佐太郎殿話
〇銀座人松村太右衛門家潰妻小児一人下女二人合せて四人即死す当
主并に息子と六才の男子家の下に成しか隣家安藤侯の家来泣声
を聞付来りて助たり
金座 長井帰朴子話《割書:称権之助》
〇金座人山本新次郎去年冬災後浅草大恩寺前に住す地震の日新