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【右丁】
ん事かたし此時一心に当社を祈念し仰願はくは主人の命救せ給へ
若助る事の協【かな】はすは我が命をも俱に断給ひと誓ひつゝ再力を極めか
の巨材を動かせしに力に応【ます】して安〳〵と取のけて終に主人を助
得たりとそ
雲鶴堂普勝伊周殿話
〇小網町弐丁目歯磨の老舗伊勢や吉左衛門か娘 雪(ユキ)十才去年霜月地
震の時泰然として更に逃出すへきけはいなし鎮りて後其故を問へは
壁【「譬え」の誤りカ】逃走りたりとも命なくは物にふれても死すへしかく在ても命あ
らは援(タスカ)るへし老かゝまりてなからへあらんよりは稚くして死した
らはあはれと見る人もありなんと答へけるを其親もいまはしく思
【左丁】
ひこゝろにかけしが此度の地震にも又更に駭く【おどろく】様なく家に坐し
居たりしか庫の壁落るに打れて死ぬ
〇《割書:此段語りし|人を忘たり》小網町辺の商家何某権門何某の藩士弐人計りを伴ふ
て劇場へ趣きしが事果て帰らんとする頃酒興に乗して頻に花街に
趣ん事を促すこの時彼士の誘引来りし鉄炮洲の辺に住ける踊の師
《割書:女也其名|詳ならす》彼士の妻に頼【たのま】れあすこそはさりかたき主用のおはすなれはい
かに沈酔【酔いつぶれること】に及るゝ共是非にすゝめて伴ひ帰りこよと契りし事のあ
なれはとて強に帰らん事を進むしかれ共猶止るへき景かせあらされ
は涕を流して停【とどめ】しにかく迄とゝむる上は今日はかへりてあすこそ行
かめと是より船を雇ふてこれに乗し宮戸川に棹さし家路に趣し