翻刻!地震・災害史料

コレクション: NDL地震・火山

地災撮要. 巻7-9(地震之部) - 翻刻

地災撮要. 巻7-9(地震之部) - ページ 108

ページ: 108

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【右丁】 〇下谷御数竒屋町に住る瞽者何かし療治に行し先の家崩れ辛ふして  壁を破りて家に走帰りしに己か家《割書:裏|屋》も又潰れたり妻子其下に在りて噢ふ【「のどよふ」=弱弱しい聲を立てる】を  直に踊入て材木を刎【はね】のけ助出し一同山下の御救小屋へ入強勇の働とて  人皆駭く                 三河町四丁目   近江屋伊兵衛話 〇下谷北大門町広【廣】小路合羽屋長右衛門宅潰れ丁稚二人大なる箱火鉢  の際にくゞまり居て其上に根太かけといふ物倒れかゝりこれは彼火鉢  に受たる故二人ともに恙なし《割書:此たぐひあ|またあり》【原文は「たくび」とあるが、濁点を打つ位置の誤り】                 数寄屋町   山田屋八右衛門話 〇幇簡鯉升《割書:始は咄|家なり》花街に住ますして浅草寺の地中借家して栖けるか 【左丁】  地震の夜廓にありて横死【おうし=思いがけない死】す常に小(チイ)さき葛籠(ツヾラ)一ツをさして母に示して若【もし】  留守中火事あらは雑具は弃【すてる。「棄」の古字】るとも此一品を携出さは活計【かつけい=生計】を失ふに至ら  しといひけるか地震のとき其教に随ひ此物一ツを持出たり彼か落命の由を  聞悲歎の中葛籠を開くに中に金七十五両を収たり是を取出して財布の侭  朝夕腰間に纏ふて仮初【かりそめ】にも側に措【お】く事なく其娵【よめ】《割書:鯉升|の妻》何かし云御身  年老てかゝる物を携へて日毎に路頭を行返置給はゝ人目にもかゝり不慮  の禍を引出さんも量りかたし他行の時は必すわらはに預て給へしかな  し給はゝ家に居てもしはらくも身を放たすして守るへしといふけにも  とて望の如く彼婦に預けて他へ趣しに姑の留守に金五両と一通を  残し七十両を携へつゝ亡命せり彼五両は幼き娘の養育の料にとて残し