← 前のページ
ページ 109 / 134
次のページ →
翻刻
【右丁】
つるよし書載せたり衆人その隠慝を憎む事甚しとそ
〇小梅瓦町なる料理茶や小倉庵はやり出しける頃の料理人に篤実の
者あり此者の骨折より商売【賣】取続【續】追年【ついねん=年を追って】蕃昌に及けれは親戚の列になして
あしらひ向側に塩干肴の肆を開きて住しめける由地震の時小倉庵潰
たれと資財は大方に取出して舟に積乗せて持出しけるか此家より火出た
りかの塩物屋も潰れて屋根に敝れ出る事ならす助けくれよと号【號=さけ】ひし
を小倉庵はおのれか家の事にかゝつらひて助け得さする事なかりし
ゆゑ彼家あるじ妻子召仕ともに四人没す世間不仁を悪むと
勝田次郎助殿話
〇寺島村蓮花寺本堂地震にて大破に及たれと世の常にかはり楹【はしら】の
【左丁】
類その侭にありて屋根計りいさりたりよりて堂守其余【餘】怪家【怪我とあるところ】なかりし
勝田三左衛門殿話
〇俳優岩井久米三郎か弟子何某か妻懐妊して臨月也しか浅草田圃
六郷侯の門前迄落のひし時俄に虫気付【産気づく】たり六郷家藩中の人憐
みて盈を貸与へこゝにて生しめたり安〳〵と産落したれと産湯等
の設けあるへきやうもあらす衣類一ツを脱て赤子を拭ひ自らかき
抱て去しとそ
近隣の噂聞くに随ひ其実を糺して左に記す
〇神田岩本町向武士地に住る橋本検校家潰れ身は平家に居て無事なり
しかど家内六人死す〇神田冨山町壱丁目小谷検校家は災後の仮建