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【右丁】
内海甚右衛門殿話
〇谷中三崎法住寺《割書:新幡随院|といふ》門番の家《割書:南の方の|表門なり》潰れ門番人は馳出
て即死する族四人は寐入たる侭に死したり是は速に馳付て助る
人あらは四人の内助る事もあるへかりけれと此辺本坊を離るゝ事
遠し門前に武家地もありしかと各惧【おそれ】り且己か家にかゝつらひて
助る人もなかりしなるへし
三河町三丁目
家主伝右衛門話
〇橋本町附木【つけぎ】店に住し者本所辺に素人浄瑠璃の寄せ場とい
へるに大景物といふ物を出す由にて其催主をたのまれ件の器物
類を買調へて荷ひ行ける同道六人ありともに此道に携れる
【左丁】
人なるへし明日こそ初日の興行すへしとてかたらひ居ける
時揺出しけれは逃出して広【廣】場へ出けるか更に足の止るへきにあ
らねは七人手をくみてあなたへまろひこなたへこけ揺止て後に
家に帰らむとせし頃道すから崩たる家の下より男女の泣声にて
助けくれよと叫ふを聞て心苦しく思ひけれと己ともが妻子の安
否も聞かされは心ならす聞流し漸く家路を求て帰りしとなむ
通新石町新八話
〇かゝる怱(サウ)【怱は悤の俗字】劇(ゲキ)【せわしく、忙しいこと】の中にも黠智(カウチ)【悪知恵】の者あり神田仲町壱丁目漆屋惣右衛門
といふもの地震の朝ふと心付俄に催して多くの樽を用意し雇夫
十七八人を連れて本所なる御漆蔵へ趣しにかの地には官吏漆樽の