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【右丁】
覆り破壊に及ひ地上に流れたるに驚きたる折なれは惣右衛門
官吏に対して云此漆この侭にして時刻を移しなは地中に流入
て徒に弃【すてる。「棄」の古字】るより他なしよりて人夫を促して多くの樽を買調へ
て参れるまゝ泥上に交らぬ所を取りて樽へ収むへしと云官吏
其速に心付且急卒を(に)馳参りしを喜ひ地上を離れし所を残らす
かの樽の中へすくひ入しめ後又云こゝに泥土にまみれしものは不浄
にして且上品の御用に立かたし此分は骨折の料にゐらん事を乞し
に迎に望に任せられしかは外の樽へ入船に積む事三艘の余【餘】は
家に帰り製し改て二百余【餘】両の所得付たりよって近隣の貧人へ
施を行へしと云
【左丁】
中村善左衛門殿話
〇本郷新町屋 骨董舗(フルダウクヤ)の妻小児を抱き小便をさせて居たりし時地
震ひ出し縁【原文は「椽」だが、糸偏の誤り】側より庭へまろひ堕たりしに豈はからんやこの所
麹室の上にて土裂頽れたる穴へ落入直に打重り母子とも助る事
ならす
飯塚市蔵殿話
〇同町なる木匠金七といふもの地震に懼怖【くふ=恐れる】し妻とゝもに大路へ走
り出たりしかこれも麹室の裂たる所へ落入たゝちに土覆ひ重りて
死したり
〇御茶の水定火消【じょうびけし=江戸市中の消防のことをつかさどった、幕府直属の火消隊】屋鋪の火の見番人地震の時下る事ならす戦慓【すばやく】