← 前のページ
ページ 116 / 134
次のページ →
翻刻
【右丁】
高き所より飛けるか材木にふれて両眼飛出て死しけるとそ
翌日其親此事をきゝてたへ入る計り歎しとなむ
雲隺堂主人話
〇尾張町に小間物の類を武家へ商ふてなりはいとせる蓬莱半
二郎といへる者あり地震の時土蔵潰れたるが息子半次【ママ】郎とて十八
才になれる者壁の下になりたるが如何してかいさゝかのくつろきあ
りて少く息は通ふ様なれと身体働く事ならす日頃信する不動
尊を一心に念して仰願くは我一命を助けしめ給へ命助らは速
に剃髪し三十に余【餘】る迄は妻を倶せじと誓ひしか程へて近隣の
者集ひて土を分けて漸くに援出して息才也しかは神威を尊み父
【左丁】
母にも其事を告て互に喜ひあひしか速に剃髪すへきの誓を忘
れて其侭にありしに俄に狂を発したり母驚ひて【「驚きて」或は「驚いて」とあるところ】ふたゝひ不動尊を祈
り強にとらへて頭を剃りしかは翌日より正気になりたりとそ
《割書: |佐平次養子》
《割書:御鉄炮師》 冨岡佐太郎殿話
〇品川二番の御台【臺】場にて活残りし人の話に此時地震とは思ひよ
らす亜墨利加の賊不意に大炮を発つて襲ひ来りしと思ひ急遽
周章【しゅうしょう=うろたえさわぐ】して海中へ飛ひ入り溺たる儔【ともがら】もありし由なり
久保啓蔵殿話
〇西の久保某侯の臣娘を本所辺なる商家へ嫁せしめたりしか夫并舅
ともに大酒を酔ふ度毎に人といさかひ夫も妻へ対【對】し色々の難題を