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【右丁】
明田藤右衛門殿話
〇上杉侯の臣《割書:留守|居》栃【杤:栃の異体字】山某の婢出入せる表具師某通せり地
震の時彼婢表具屋に対【對】して助け呉れよと云此男勝手もと
の格子を破り女を助け先へ出しやりおのれも続【續】て逃出ん
とせし時家潰れて即死す
水道橋外茶店老夫話
〇日本橋の畔に住る人地震の時小川町を通りかゝりしに籏
本某の家中長屋潰れたる中に女の声して助けくれよと
いふ止事を得すしてこゝにいたり壁を穿て手をとりて引出
さんとしたるに両足はさまりて出す色々としけれと愜(カナ)はす
【左丁】
其内火炎̪熾【さかん】に起り己か身に迫らんとすよつてなく〳〵其い
だける小児を受取主人と夫の姓名を問ひ聞て家に帰り火鎮
りて後小児をいたきて送りかへしけるとなん
古沢【澤】故十郎殿話
〇八代洲河岸定火消屋敷火之見屋根計ふるひ落たり時火之
見番二人もまろび落て存命す一人は腰を打一人は怪我な
し太鼓も無事なり
文鳳堂話
〇亜墨利加へ渡りし中浜【濱】万【萬】次郎【ジョン万次郎】は本所江川侯の屋敷内に住
たりしか家潰れけり自ら天井を突破りて夫婦とも無事なり