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【右丁】
小田屋八右衛門話
〇或武家方の中間部屋潰たり数寄屋町辺より日毎に此屋敷へ
售【あきな】ひ物を運ふ丁稚あり此時も居合して潰家の下に成しか辛ふして
のかれ出たり此時中間壱人材木に圧【壓】れて出る事ならす外に人
もなかりしかはかの丁稚安〳〵と是を上けて助たり彼丁稚か
微力に愜【かな】ふへき材木なれはさしもの巨材にはあらさるへけれと
大の男といへとも手足自在を獲【え】されは這出る事【「叓」は「事」の古字】さへ叶はぬもの
と見えたり其後かの丁稚を命の親とて厚く謝し鳥目【ちょうもく=銭また一般に金銭の異称。江戸時代までの銭貨は円形方孔のもので、鳥の目に似ているところからの名称。】二百孔【二百文のこと。百文の銭を紐に通したもの二本】を
与へたり傍輩の親にしては謝儀【謝礼】甚薄し今少し収たれよ【「れ」の右下に小さく記す】といふよ
つて丁稚尚二百孔を乞しかは望のまゝに与へたるよし四百孔の
【左丁】
銭を以命買得たりとて笑ひぬ
長岡町茶店婦人話
〇本所南割下水典薬頭今大路右近殿地震に家悉く潰れ主人
内室娘并家来皆死したり残りしは少年の息子と若党【黨】壱人の
みと云々
〇町方同心《割書:南御組》岡本角助《割書:三十|余才》十年程以前御前手の組へ入本郷の
辺に住す御馬預り諏訪部紋九郎殿と懇意にて二日の夜も其家に
趣き対【對】話してありし時潰れて主君とゝもに即死したりと聞り《割書:御息|女女》
《割書:中中間外に壱人合六人程巨材|にひしかれたりし由なり》