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【右丁】
かゝる話はいくらもありて無益の談なれと新昇亭か度々はなしける
まゝこゝにかへぬ
楓園相模屋善四郎話
〇牛込神楽坂下牡丹屋敷角瀬戸物屋何某方位に委しき人を
よひて宅相を鑒【鑑】定せしめて家を営みしか此地震にあひて家
藏破失し其身家族とも失ひしとそ
〇受地村植木屋平作は頗冨家也盗賊を恐れて入口は更なり居間
のあたり其外栓をはめて堅くさし容易に戸扉の明【「開」とあるところ】かぬ様にしつ
らへ置たりしか地震の夜家居動揺する故弥〆り【いよいよしまり】かたくなりて俄に
明【「開」とあるところ】る事ならす其内家作潰れて即死せる由
【左丁】
〇南鞘町大工棟梁何某石をたゝみし庫を持しか地しんの時
上の石は【「わ」の誤り】づかに壱枚落ちたりしかあるしの脊にあたりて即
死せり
〇熊野牛王所覚泉院は下谷御数寄屋町に住す地震に家悉く
潰れてあるじ夫婦養母小児二人下女壱人合六人家の下に成り
苦しみしか家婢かね《割書:上総の国|天羽郡産》といふておのれも差鴨居といふも
のに挟れしを強に引抜て這出し主人を呼ふにかれ〳〵【「カレガレ」=絶え絶え】 に答
ふるを聞て悲歎にたえす瓦屋根のぢといふ物のおそ【うすいところ】取除た
れと微力の及ふべきにあらすされは泣声発して主人の命助け
くれよと呼はりあるき近隣の輩を頼み辛ふして材木をかゝけ