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【右丁】
俳茶香書画等の風流をもて世を渡る人も近年武芸【藝】の盛な
るより世にすさめ【すさむ=慰み興ずる。もてあそぶ】られしも此頃にいたりては更に活計【生計】を失へり
芸茶園(ウエキヤ)暫業を休
〇十月十八日深夜八時頃雷鳴少し有同夜大雨降野宿の輩甚苦し
めり然るに同夜中俄に海嘯(ツナミ)の患あるへしといふ夭言街にいひ
ふらし京橋の辺より八町堀深川辺【邊】のもの資財を荷ひ巷に
逃惑ひしものあり《割書:是は盗賊の云ふらしける言なるよし品川の辺にて|も御殿山へ財を運ひて逃のひしものありて甚騒動し》
《割書:ける|とぞ》
蝉丸はとてもかくてもすくし【すぐし=くらし】けん藁屋に雨のもるそわひしき 新梧選
風あらき山田の庵のこも簾時雨をかけてもる木葉哉 前太政大臣
【左丁】
〇地震潰家焼失場所付并絵【繪】図等七日の頃より街に鬻【ひさ】き絵草紙
屋にて商ふ物数百種狂画【滑稽を主とした絵。ざれ絵】狂文【滑稽な文章。江戸中期以後、狂歌に対して起こったもので、諧謔(かいぎゃく=冗談、おどけ、しゃれ)、風刺を主としたもの】小哥【時代により意味と曲風が違う。江戸時代は俗謡小曲の総称。上方では「小歌」江戸では「小唄」と書くことが多かった】にと作りて商ふ《割書:浪花の人話に|去年彼地地震》
《割書:高潮の時端切らすと云紙横に四切のものへ地震潰家高潮の患に逢ひ|し所々を書付し摺物を価八文位に商ひしを官府より止められたる後再》
《割書:板する事なし今年江戸へ来るこの地震にあひしか二日三日過るまゝに|次第に樟にえりて街に售ふもの幾百種ならん十月の末求歩行しに》
《割書:代金弐歩弐朱の品々を求めしか霜月にいたり日々新板の数多あるを見|て江戸の広大なるを駭【おどろき】しといへり又十二月の始代金弐両余りの絵類を》
《割書:調へし人ありしか未足らすとぞ十二月初旬売買を停られたり|△遠国他郷の旅客購ひ得て各苞苴【ほうしょ=贈答品】としけるが》
〇災に罹し所々瓦礫焦土の中へまはらに仮屋を営みて住る輩雨の
夜などは更るに随いて自ら物 凄(スコ)し寂寥たる中多くの人声 幽(カスカ)聞ゆる
様に覚ゆるよし臆病のいたす所々