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【右丁】
〇地震の数日以前浅草御蔵前福本といへる茶店にて轎夫【キョウフ=駕籠かき】か
息杖を立たる僅かの凹より水湧出る《割書:此茶屋は近頃迄喜八団子の庭にし|て堀井戸の在しを此所取拂になり》
《割書:し時埋立し|所也といふ》諸人奇として見物す所にて思ふに是前兆なるへし
とこれは九月廿一日の事なりと又神田平永町北側籾蔵の前にも
地震少し前町屋の路次口の外より水湧出たり人々不思議の事
に思ひしとそ都て諸方とも井の水増たるよしなり
市谷柳町 俳画堂加藤岩十郎殿話
〇牛込川田〃窪菜種店万【萬】屋某か裏に榎の古樹あり枝葉繁茂し
けるか七八月の頃より数万の雀群り来りて囀り戯るゝ事日毎に
かはらすしかるに地震の前よりはいつとなく減して一羽といへと
【左丁】
も来らすなりぬと是は前兆とも定りたけれと此頃の一奇事なれ
はとてかたられしまゝ誌しぬ《割書:閑田辨筆には其説を挙たる|ありといふものゝ属か尚考ふへし》
本所御台所町 深川元儁子話称潜蔵
〇地震の前兆甚些し聊事替りしは彼岸桜梨子桃梅返り咲
あり亀戸には緋桃の返り咲有△九月末下総我孫子の辺に鶏小?
にとまらす梁の上にとまれり△十月朔日昼向島辺烏啼事夥し
夜にいたり狐群りなく△地震の二日前本所御台所町深川元儁
子の家に箱に入置し小亀残らす死す又宅の辺鳶烏群り啼く
事甚しかりしと△十月朔日下総相馬郡立崎羽中の辺に山
うがち地中より出て動く事ならす